468人が本棚に入れています
本棚に追加
「きさ……君は昨日の」
「そういうお前は昨日の」
つい昨日のこと、ヒューゲルが【女子学生寮】から退却しようとした際に呼び止めた、豹人族の女性だった。今日もビシッと燕尾服を決めている。
がしかし、だからといって別段会話が弾むなどというおめでたい(?)イベントが発生するわけでもなく。
コホン、咳払いを1つして、豹人族の女性──ライラックは「それじゃあ、この水晶に手を当ててみてくれ」と何事もなかったかのように(本日は実際に何もなかったわけだが)話を進めた。
ヒューゲルの方も特に振る話題がなかったために指示に従って水晶のようなものに触れてみるが、それから1瞬(約1分程)は何も変化が起きなかった。
「……」
「……」
「……何も起きないんだが」
「おかしいな、普通ならすぐに変化が現れるはずなんだが……」
結局、水晶のようなものに変化が起きたのは、それからさらに沈黙の時間が3瞬(約3分程)が経過し、周りもまばらになり始めた頃だった。
自分の検査が終わったのか近寄ってきたリュミエールやサクヤ、レヴィたちもヒューゲルが触れている水晶のようなものに注目する中、水晶のようなものがその顔色を徐々に濃い紫色へと変えていき、その様子を見たサクヤは(サクヤと同じです!!)と小躍りし、レヴィやリュミエールは少し不機嫌な表情になった。
机を挟んで向かい側に座っていた豹人族の女性もしばし黙ったまま水晶のようなものの変化に見入っていたが、やがて放心状態のような状況から抜け出すと「どうやら、お前の属性は“闇”のようだな」と締めた。
だがしかし、水晶のようなものの変化はこれだけではなかった。
それはすぐに表れ、濃い紫色をしていた水晶のようなものは今度は淡い水色に変化していく。
最初のコメントを投稿しよう!