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09
「そういうことですので、ヴェル、少し騒がしくなってしまいますが構いませんか?」
「『そういうこと』ってあなた、私が聞いていた限りでは会話の流れが急展開すぎるというか、あなたが無理矢理こじつけただけのように思えるのだけれど。
それに、『構いませんか?』って訊ねる時点で──と、この話は終わりにしましょうか」
言いながらもサクヤの連れてきた面々を確認したヴェルは、(はぁ……)と誰にも悟られないよう小さく息を吐き出した。
これ以上は何を言ったところで無駄だろう。訊ねられた時には既に全員が室内に入っていたのだから、拒否権の有無から問うことさえ愚かしく感じる。
それ故に、ついでにというわけではないがもう1つおまけにため息を吐いて、ヴェルは事件を未然に防ぐことにした。
「それじゃあサクヤ、あなたは座っていてもらえるかしら」
当然のようにキッチンへ向かおうとしていたサクヤは、襟首を掴まれて「えぐっ」と軽く喉を詰まらせた。
「あら、ごめんなさい」
手を離すと、サクヤは喉を押さえて軽く咳き込み、そして落ち着くのも待たずにヴェルに突っかかった。
「いきなり何をするのですか!?」
「言ったでしょ、『座っていてもらえるかしら』って。それなのになぜキッチンへ向かおうとするのかしら?」
「なんですか、どうして調理することがいけないのですか。ヒューゲル様たちをご招待したのはサクヤですよ? サクヤがおもてなしするのは当然ではありませんか」
「どこの世界の常識よ、それは……」
ヴェルは思わず額を押さえてしまった。
そんなことを気にするぐらいなら、もっと他のことにも目を向けて欲しいと願う。
例えば、いろいろと主張の激しすぎる代物であるとか。ピチピチな服ではなくせめて体を全体的に覆い隠すことができるぐらいの服を着て欲しいものだ。自分が言える立場ではないのかもしれないが。
あとは、まあ……とりあえずあの超絶的なまでに破壊精神満載のゲテモノ料理をどうにかして欲しいところではあるが、そちらの方が時間は掛かりそうだ。
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