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「まあとにかく、そういうことだからあなたは座っていなさい。調理はあの子たちに任せて」
サクヤを引き留めた時には既に他の2人の少女がキッチンで作業の準備を始めていた。サクヤが潜り込むスペースはどこにもない。
「せっかくヒューゲル様に食べていただけると思いましたのに……」
誰が見ても落ち込んでいると判るほどにガックリと肩を落とすサクヤ。
そんな彼女に、希望(?)の声が掛けられる。
「すまないサクヤ、それはまたの機会に取っておいてくれ。さすがの俺でも食べ残さない自信はない」
「そう……ですか……。ヒューゲル様がそう仰るのでしたら……自粛します……」
(何なのかしら、この2人……)
ヒューゲルとサクヤのやり取りから、ヴェルの頭にふとそんな疑問が浮かんできた。
黒髪の青年を“様”付けで呼ぶくらいだ。彼のことをただ“知っている”だけではない、心のもっと深くまで知り合っているような、そんな関係のように見えた。
しかし、慰めの言葉に素直に従って(それでも)黒髪の青年の隣に着席した今の彼女は、何というかひどくかわいそうに見えてきた。こちらとしても何か悪いことをしてしまった気分になってしまう。
そうはいっても、その後に出てきた、食しても大丈夫そうなちゃんとした食事に思わず安堵の吐息を漏らしてしまったことは否定しないが。
注):当然のことながら、おいしくいただき完食させていただきました。
その後1刻(約1時間程)何のことはなく他愛もない会話に花を咲かせたり寛いだりして、その場はお開きになった。
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