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「なんだ、そういうことですか……。取り乱してしまって恥ずかしいです……」
サクヤは一息入れて自分を落ち着かせて、
「そういうことでしたら、サクヤはもちろんヒューゲル様の味方ですが、“ドレイ”……というのは何ですか?」
その上で首をかしげた。
「いえ、知らないのであればその方がいいわ。知らなければ損をするというわけでないし、知っていても別に得をするというわけでもないから」
「そう……ですか。
でしたら、なぜ貴方はそのことを知ろうと思ったのですか?」
「急にどうしたの?」
「だって、そうではありませんか。
知っていようが知らなかろうが、その“ドレイ”という言葉に損得の価値はないのですよね? それを貴方は知っていました。知っていながらその意味まで知っているみたいですね。
何をするにも“きっかけ”があるかと思いますが、それは何だったのですか?」
「それをあなたに話して、私に何か利益があるのかしら」
もっとも、ヴェルは“知識”として知っているということだけでは説明できないのだが、それを話して果たしてこの闇妖精族の女性はどれだけ理解できるのだろうか。
「特に得をするということはなさそうですね。ただ、少しだけ気になったものですから」
「ふ~ん、まあ、それならそれでも構わないのだけれど。
仮にもし話したら、代わりにあなたと青年君の馴れ初めを聞かせてもらえたのかしら」
「はいぃぃぃぃぃっ!?」
“どういう関係”や“馴れ初め”という言葉に異常な程敏感に反応を示すサクヤ。情緒豊かというべきか、感受性が豊かというべきか。
「冗談よ。別にあなたたちの馴れ初めなんかに興味はないから安心してちょうだい」
「そう……ですか」
今度は一転、落ち込んでしまった。本当は誰かに話したかったのだろうか。それならば、今度別の話題と交換してもらうことにしよう。
しかし、今度はサクヤが立ち直るのは早かった。
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