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「気づいていたのは私だけではないと思うのだけれど。
それで、こんな時間のこんな場所にいったい何の用──って、訊くだけ野暮ね。青年君なら先に帰ったわよ」
「関係ありません。自分はヒューゲルを迎えに来たわけではありませんので」
「誰も“ヒューゲル”だなんて一言も言ってないのだけれど」
「……っ!? そ、それはともかくです」
やや早口でごまかすように言うなり、レイヴィアは背負っていた得物を取り出し、その切っ先をヴェルに向けた。日傘は必要なかったのか、見る限りでは持ち出して来てはいないようだ。
「部屋では訊くことができませんでしたが、何故あなたがここにいるのですか。 先に言っておきますが、“罪滅ぼし”などという馬鹿げた理由は認めませんので」
「そう。それなら“協力要請”といったところかしら」
「何ですかそれは」
鼻で笑われてしまった。
「それこそ馬鹿げた理由ですね。馬鹿馬鹿しい、愚か者のする発想のように思えますので。
協力要請? 今さら何の真似ですか。味方や仲間になりたいと、そういうことでしたらお引き取り願います。自分は断固拒否しますので。
そもそも、“協力要請”という言い訳のようなものこそが“罪滅ぼし”をしようとしているとしか感じられませんので」
「まあ、総括的に言えば“罪滅ぼし”ということで間違いはないのだけれど。私に関係ないと言えば嘘になるわけだし」
「それは別の見方をすれば“責任転嫁”と言うのではないのですか」
レイヴィアが1つため息に近い吐息を漏らした。
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