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「サクヤ、あんたどさくさに紛れてこいつの看病を申し出るつもりじゃないでしょうね」
「ち、違いますよ!? サクヤは別にそのようなつもりはありま……」
「目が泳いでいるように見えるのは自分の見間違いでしょうか」
「そ、そういうお二方とも、ヒューゲル様の手当てをしたいのではないのですか!?」
「な、なんであたしがこいつの手当てなんかしないといけないのよ!?」
「リミルはともかく、自分は単純に鍛練したいだけですので」
「そうよ、あたしはともかく……ってなんでそうなるのよ!?」
「誰もノリツッコミは求めていなかったのですが」
それからしばらく女性3人は三つ巴で互いに売り言葉に買い言葉のような言い合いを繰り広げていたが、呼び掛けても応えない3人を置いて歩き出したヒューゲルに口を閉ざしてそれぞれの歩調でついていくのだった。
そうして所定の場所──昨晩ヒューゲルと水妖精族の女性がやり合った森の中にある焚き火の跡が残っている場所──を囲うようにそれぞれが到着するなり、まるでスイッチが切り替えられたように戦闘鍛練の始まりを告げる聞こえるはずのないないゴングが鳴らされた。
2人だけの時には少しだけ広いと感じたこの場所も、4人ともなるとやはり手狭に感じる。
サクヤの大鎌。
リュミエールの刃先から柄の部分までがまっすぐな直槍。
レヴィの投刃。
そして、ヒューゲルの双剣。
4つまたは5つの武器が夜明けの残光に閃めく。
戦闘スタイルだけで見れば不利なのはククリナイフをブーメランのように投げ飛ばすか格闘術しかないレヴィだが、身体の状態も合わせて見れば少しだけ不利なのはヒューゲルだろうか。
「どうしましたヒューゲル、あなたの実力はその程度ですか」
戦術的特徴や身体状態から鑑みてその差はあるのかもしれないが、しかしサクヤたちはまったく意にも介さず攻撃をお互いに繰り出し合う。
戦闘開始直後に先制攻撃とばかりに投げ飛ばされた回転しながら襲いかかってくるククリナイフをいなすと、今度はレヴィが直接拳や蹴りを叩き込もうと飛び掛かってきた。
しかし──
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