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そんなこんなあったり考えたりして、改めて──というのも変な気がするが、【男子学生寮】を出ると、
「おっ、ようやっと来よったな」
そこには、【フフォード王国】では耳慣れない喋り方をする水妖精族の少女と、ブスッと少しだけふてくされた表情で腕組みをするエルフ族の少女が待っていた。
「……今度は何なんだ」
「そない睨まんでもええやんか、なにも襲いかかろ思うとるわけやなし」
まるで見てきたかのように言われた。
ヒューゲルからしてみれば睨んでいるつもりなどさらさらないのだが、水妖精族の少女──ノイルにはそう見えてしまったようだ。
それに、このような場所で強襲を仕掛けるつもりだったのなら、よほどのことがない限り気が狂れているとしか思えない。時間帯によっては目撃者が大勢になることもあるだろうから。逆を言えばそのような時間帯を除けば強襲や暗殺などは簡単に成功してしまいそうだが、 それにしてもやはり気が狂れているとしか思えない。
「まあ、こないな場所におっても遅刻してまうだけやし、行こか」
「う、うん……」
歩き始めるノイルに続く形で歩き始めたリュミエールにやや遅れて、ヒューゲルも歩き出す。
しかし、この時のリュミエールは、ヒューゲルでも分かってしまう程におとなしかった。つい昨日までの男勝りのように思える行動も一切なく、むしろどことなくソワソワしたような雰囲気。
「どうかしたのか、リュミエール」
そんな彼女の様子の理由は、当然と言うべきか彼に届くはずもなく、
「な、なんでもないわよっ!?」
リュミエールもリュミエールで若干吃りながらツンデレる始末。
そんなギクシャクしたような2人を背後で感じたノイルは、何を思ったのか何かしらを察したらしく(よしっ)と策を講じることに。
【学生寮】を出てすぐの坂を【ドランヴァリエ竜騎士学院】に向かう道すがら、先を歩くノイルが何とはなしに後ろを振り返った。
その動作に察したのだろうリュミエールがハッ、と驚いた表情をするが、実際はそんな間もないほどにすばやくノイルは彼女の腕をヒューゲルのそれに絡ませる。
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