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02
「それじゃあ~、授業を始める前にみんなのことを少し教えてもらおっかな~」
【学院】正門前で何やらよく分からない一悶着の茶番劇を見せられた後、リュミエールとサクヤは他の女子生徒たち十数名と一緒につい昨日【新入生歓迎の儀】なるものが行われた建物にいた。
女子生徒たち以外にいるのは、このクラスを受け持つ女性担任教師、ミロス=グラストただ1人。ここには男子生徒たちも男性教師もただの1人もいない。どうやら、彼らは別メニューらしい。
「今から名前呼ぶから~、呼ばれたらその場に立って軽く自己紹介してくれるかな~」
それじゃあいっくよ~、と何のつもりなのかが分からない掛け声をして、ミロスは1人目の生徒の名前を呼んだ。
そうして点呼→起立→自己紹介→点呼の流れが始まったが、程なくして一時的に中断させられることとなった。
「それじゃあ次は~、カルム=ヴィアスちゃ~ん」
シ~~~~ン……
「カルムちゃ~ん、いないのかな~? 今日はお休み~?」
「先生」
手を挙げたのはカルムという名の少女本人ではなく、その1つ前に名前を呼ばれた、ツンツンしている赤い髪が特徴的な火妖精族の少女だった。
「カルムは……その……ちょっとした諸事情……みたいなことがあって……、まだ……当分の間は出てこられないかと思います」
「そうなの~?」
ミロスはポリポリと頬を引っ掻いた。
授業を開始してしばらく日数を数えるならまだしも、今日はその初日。心配も当然のことながら、その原因理由が不明ということもまた悩みの種の1つだ。
「それじゃあカノちゃ~ん、カルちゃんとも知り合いみたいだし~、お願いしてもいいかな~?」
「分かりました」
「なんかしんみりしちゃったね~。続きやろっか~」
それから再び点呼→起立→自己紹介→点呼の小さなイベントが再開。
──その結果、この日の欠席者はカルム=ヴィアスなる少女ただ1人だけだった。
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