戦闘鍛錬と小競り合いと心の靄

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「あれあれ~、みんなどうしたのかな~? 分からないからって手を挙げることを強制したり、間違った答えを言ったからって責めたり詰ったり、その程度のことで怒って『馬鹿は居残って補習!!』なんてことは言わないから安心して~」  その言葉を聞いてどう安心すればいいのだろうか。緊張を和らげるための冗談のつもりなのだろうが、初心者にとってそれは逆効果であり、脅し文句のように取られても仕方のないことだ。 「それに~、今日は授業初日なんだから気楽に行こうよ~」  その言葉もすでに手遅れのような気がするのだが。 「僭越ながら、私がその問いに答えさせて戴きます」  そんな中、生徒たちの間からすっと手が挙がり、やおら立ち上がる1人の女性。  頭の両端から耳が見えるために外見は獣人族となんら変わりがないように見えるが、違いがあるとすれば下半身から生えているギザギザ模様の尻尾だろうか。  彼女は○妖精族(フェアリーズ)の一種、雷妖精族(ネムエル)だ。わざわざ重ねて言う必要もないかと思うが、獣人族ではない(・・・・・・・)。各員、努々そのことをお忘れなきように。  さらに彼女について付け加えると、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるかなりのナイスバディで、この場にいる生徒たち(+ミロス)の中でも大人びて見える。  しかし、せっかく回答者が現れてくれたというのに、ミロスはなぜだか浮かない顔になった。 「う~ん……、ネムネムなんか堅いな~……」 「堅い……ですか? それにその“ネムネム”というのは……」 「ん~? “ネム”だから“ネムネム”だけど~?」 「何ですかその『当然でしょ』と言いたげな目は」 “ネムネム”という不本意なニックネームをつけられてしまった雷妖精族の女性だったが、それでも咳払いを1つして話の路線を元に戻した。
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