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「話を戻します。
先程カノンさんが仰っていましたが、龍気とは空気中に含まれている酸素や二酸化炭素などと同じよう気体である他、自分たちの体内でも生成することが可能です。
その使い道としましては、もちろん魔法が主流ではありますが、その他には魔法武器、通称魔器の具現化、女性が飛竜へ変身する時にも消費されます。
男性が“龍化”できない理由としましては、男女間で体内龍気保持量に差があり、女性の方がそれは多いから。以上です」
言って床に腰を下ろすネムに、ミロスはまたしても手を叩いてまるで我が事のように微笑む。
「ありがと~ネムネム~。
ついでに付け加えると~、わたしみたいな龍人族なら男の人でも“龍化”できるよ~」
そこで手を打つと、ミロスは「は~い、それじゃあ座学はここまでにするよ~」と言って、とてとてと壁際まで走っていった。生徒たちの視線も自然と彼女の背中を追う。
そうして壁際までくると、ミロスは壁に取り付けられた一見すると不自然に思えるかもしれないスイッチに精一杯──爪先立ちまでして──手を伸ばした。しかしながら、彼女は教師陣の中でぶっちぎりに最も低い身長。それ故か、無情にも指先ほんの数ミリでさえ触れることがない。
くり返しピョンピョンと飛び跳ねるその姿は、木の枝に引っかかってしまった風船を取ろうとしている子どもを彷彿させるが、結果論から言って何度やってもスイッチを押すことができる様子はない。
「ミロス先生、あたしがやります」
周りの誰もが動かないのを見ていてじれったくなったリュミエールが立ち上がった。
「ありがと~リュミちゃ~ん。それじゃあ~、よろしく頼むよ~」
はい、とスイッチに近づいてみれば、170センチ近い身長のリュミエールよりも高い位置にそれは設置されていた。
(なんでこんな高いとこについてるのよ……。ミロス先生の背が低いことを知らないわけじゃないでしょうに……)などと心の中で文句を漏らしつつ、わずかながらに踵を上げてスイッチを押す。
──しかし、何も変化が起きない。
「あ、あれ……?」
(えっ、まさか壊れた!?)と思って連打してみるが……、やはり変化なし。
通常であっても何が起こるのか知らないけど、やっぱり弁償しないといけないよね……と早くも後悔し始めてしまうリュミエール。
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