戦闘鍛錬と小競り合いと心の靄

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  「それじゃあ~、早速だけどみんな“龍化”して実際に戦闘鍛錬してみよっか~」  言うと、ミロスが先陣を切って巨大な飛竜へと姿を変えて空へ飛び立った。全身を覆う深紅色のウロコが青空に映えてまぶしく見える。  しかし、ここでまた問題の壁が出現した。 (サクヤは闇妖精族であるため、彼女以外の)生徒たちもミロスに続いて地上を離れていく中、まだ1人──地上で蹲る(ミロスたちからはそう見えるだろう)人がいた。  リュミエールである。  他のみんなが飛び立つ中、その様子を見向きもせずに俯いている。 『リュミやん、何しとるんや? はよ来て一緒にやろ~や』 「う、うん……」 (そんな軽いノリだといつかケガするわよ……)と思いつつ思わず上空を見上げてしまい、今度は本当に膝を抱えるようにして蹲ってしまう。 『りゅ、リュミエールさん!? だ、大丈夫!?』  あわてたミロスが降りてくるが、リュミエールは気づくことなくこみ上げてきた嗚咽を堪えるためにノドを押さえている。 「リュミちゃ~ん、だいじょうぶ~?」  単純だと笑われるかもしれないが、背中をさすってもらってすぐに気分()落ち着いてきた。気分は落ち着いてきたのだが、その代わりに懐かしさと悲しみが嗚咽と一緒にこみ上げてきた。  瞼には水滴も滲んでくる。  それでも、リュミエールは涙を拭って気丈に立ち上がった。 「大丈夫です。少し気分が悪くなっただけですから」 「気を悪くしないでほしいんだけど~、リュミちゃん、リュミちゃんってそもそも“龍化”できる~?」  1度ならず2度までもくり返すように同じ単語を耳にし、リュミエールは反射的に体を震わせた。俯き加減がさらに少し悪化してしまう。  そうして、リュミエールはわずかながらに首を横に振った。 「わわわごめんごめん~、えっと、決してそういうつもりで言ったんじゃなくて~……」 「だから大丈夫ですって。少し休めばすぐに良くなりますから」 「保健室に行くならついてくよ~」  そう言うと、ミロスはリュミエールの返事も待たずに上空に浮かんでいる生徒たちを見上げた。 「ごめんねみんな~、今日は自主鍛錬にしてくれるかな~」  は~い、と揃った返事を聞いて、ミロスはリュミエールを背負って【第1フィールド】を後にした。
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