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「カーズは、死んだよ」
いきなり、言い放つ男の手には壊れた枷が握られている。
馬車から抜け出した囚人一○五だ。
アスカは、門の壁に背を付ける。
「カーズが死んだ?」
別隊員が、聞き返す。
「哀れかな。心臓発作だそうだ」
「遺体は!」
「二階にある。投げようか?」
囚人が、二階の窓から顔だけ出して笑った。行動がすでに人知に反する。囚人は、こちらの返答を待っていた。
「今から行く。貴様もそこを動くな!」
突撃隊長が、部下を数人連れて図書館へと進む。
アスカもそれに続いた。
図書館は二階建てで、棚に本が並んでいる。二階への階段幅は狭く、一段一段が登りにくい。隊は、列を組んで、二階に上がる。
二階部屋で男は死んでいた。顔は苦痛に満ちている。
窓際の囚人は動かない。
「この数時間になにがあった?」
突撃隊長が囚人に詰め寄った。
「なに。話の最中にぽっくり逝っただけさ」
「話? なんの話だ?」
「仲間になるか、死ぬかって話だな。それでこいつが欲しいと交渉した矢先だった」
緊張感の薄い声音で、囚人がロザリオを突き出した。アスカは、それに見覚えがあった。反転した十字架は対立組織の称号であった。
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