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数日が過ぎる。
監獄島の繁華街にマドレーヌという喫茶店がある。
島で一番古い喫茶店だ。
客数は二百を収容することができる。昔は二階建てで二階に店主が住んでいた。
店主のミストは、病気を患って三年前に入院した。今は最期くらいは自由に行きたいと店を娘のミックとアルバイトに店を任せて島を出ている。生死は不明だ。手紙も届かない。
「今日は、非番?」
ウエイトレス姿のミックが、紅茶を出した。朝から居るので不思議に思ったのだろう。
「そうだよ。考え事をしてたんだ」
ミックとアスカは、第一等星警隊時代からの友達であった。
学校へも一緒に通っていた。今ではいい思い出であった。
「それ、どうしたの?」
ミックが、ロザリオに気づいた。
「カプリさんの」
「あの奴隷闘伎場に居た?」
「そう。でも綺麗に掃除されていて誰のものか分からなかった」
「そっか。第一等星が無くなる前だもんね。皆が消えたの」
「八年だよ? まだ、見付かるって信じて居るのはカリンさんだけだよ」
アスカは、ロザリオを握る。
「アスカちゃんは、信じてないの?」
「記憶が劣化していくんだ。どんどん皆との思い出が無くなって、本当に居たのか分からなくなっていく」
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