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「今から行きますか?」
ライトが、続けて聞いた。
「そうだね。善は急げというものね」
アスカは、席を立つ。
ライトの用事が終わるのを待って、アスカは喫茶店を出た。
ライトの家は、喫茶店から一時間離れたカリオス街にある。
カリオス街は、別名アパート街と呼ばれる街で、格安のアパートメントが建ち並んでいる。
その一角にある三階建ての建物の二階部屋が、ライトとマナが住んでいる場所であった。
ライトの母親は四十の時に痴呆を患った。島や大陸の医療ではどうすることもできない。
記憶が劣化し、生活に支障をきたす。そんなマナの面倒をライトはひとりで看ている。ライトはまだ十代だ。自炊し、働き、生活をしている。学校へは行けないので、読み書きは知り合いのカリンが教えていた。
部屋に入るとマナが編物をしていた。何を作っているのか本人もわからないあたりは重症であった。
「母さん。ただいま。アスカさんが来たよ。見せたいものがあるんだ」
ライトが、真っ先に部屋に入り声を掛ける。
「ん……?」
マナが編み物を止めて顔を向ける。
アスカは、会釈してロザリオを見せた。
「この刻まれている文字はわかりますか?」
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