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「――!」
マナが僅かに反応を示す。
アスカはロザリオをマナに渡した。
「なにか思い出しませんか?」
せめて、柄の部分のことだけでも分かればとアスカは根気よく尋ねた。
「何十年前のことかな。懐かしいな」
マナが、ゆっくりと口を開く。
「これ、カプリさんが持っていたんです。なんでもいいんです。分かることを教えてください」
「ん――あら、アスカちゃん。こんにちは」
「こんにちは。マナさん」
「今日は、どうしたの?」
マナはマイペースに続ける。
数秒前の質問も手にしたロザリオのことも忘れているようすであった。
アスカは、もう一度同じ質問を繰り返す。
マナは、ロザリオを見る度に嬉しそうな表情をするばかりであった。
「やっぱり、無理か」
ライトが机にさっき買った菓子を並べる。
「直ぐには、思い出せないみたい」
「すいません。折角、来てくれたのに」
「なにか、思い出したら連絡をちょうだい」
アスカは、マナからロザリオを返して貰おうと近寄った。
マナがロザリオを弄っていた。熱心過ぎて言葉を掛けるタイミングを見失う。
「これは、スピカさんに渡した。私のロザリオ」
マナが、言葉を零す。
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