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「え――?」
アスカは聞き返した。
「唄ったのね。消えちゃうって言ったのに。スピカさん、変なところで頑固だから」
「それ、カプリさんに渡っていたんです」
アスカは、マナに迫る。
「それじゃあ。彼も唄を――?」
マナが、顔を上げる。
「わからないんです。だけど、消えたのは間違いないです」
「そう。危険よ。これは詩」
「ウタ? なんのウタですか? 隊長にも渡しましたか?」
「――――ん、ライト。ケーキまだ?」
マナは、ロザリオを置いた。口にしたことなどマナにしてみれば重要ではないのだろう。それとも、無意識なのだろうか。アスカの存在を忘れたようにケーキを突く。
アスカは、マナを見詰める。昔は活発な人であった。それが、時を経て脳の病を患った。話をまともにできなくなって、記憶も曖昧になった。
ライトが首を振る。
「疲れたんだ。ほんとすいません」
「うん。じゃあ、私はこれで」
アスカは、ライトの部屋を出た。
夕暮れ時のカリオス街に帰り客が溢れていた。
朝と夕方がこの辺りを賑やかにする。
アスカは、ロザリオを鞄に入れて下宿先に戻ることにした。
隊長にはロザリオを渡したのだろうか。もう一度、マナに聞く必要がある。
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