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隊長は、いつの間にか消えた。
隊長には名前がない。
男であったことは確かだが、資料は全て消されて、居なかったことにされている。
アスカも余り関わっていなかった。なぜなら彼は、事務所に居なかった。
ある時、政府の命令で逃げてきたマナを大陸に送りに行った。その時、副隊長のスピカも事務所を出た。
神官側と喧嘩をしているというので、アスカはコアリス達と二人を迎えに行った。
その帰りに何かを連れて帰った。
その時点でなにかが狂ったのを覚えている。
あれよあれよと時間が過ぎる間に、隊長は消えた。
後を追い掛けて副隊長も消えた。
謎は段々と風化して、誰も気にしなくなった。
アスカは、ずっと付けていた日記を遡る。
事件日記であった。楽しい思い出もあったが、辛いので一行だけ書いた部分もある。そこには、確実に隊長のことも副隊長のこともきっちり書いてあった。副隊長とカリンが結婚したことも、消えたときのこともきっちり書き留めている。
(連れ帰ったなにか――)
下宿の部屋で日記を漁る。
必ず、その前後に何かを書いた筈だ。
時は経って、日記の紙は色褪せたが、まだ文字が読めないほどではない。
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