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どれくらいの距離を歩いただろう。
少女は、埃を払って周りを見る。
水の気配も人の気配もまったくない。
「こっちだ」
誰かがまた、少女を誘導した。
少女が不安に侵される度に、声は少女を導いた。
風がぴたりと止んだのは、夜の気配が強くなってからであった。
歩いて、歩いて、歩いた先に瓦礫と瓦礫に挟まれた道に入る。
少女は道を知っていることに気がついたのは、その道を抜けてからであった。
そうするとどこに居るのかますます知りたくなって、少女は歩く速度を早めた。
少女は、知っていたが思い出せなかった。固有名称が出てこないまま、息を弾ませて呼ばれた方向に走る。
少女がたどり着いたのは、少女が良く知る入江だった。
「来たね」
声の主が、崖際に突き刺さっている。
少女は、恐る恐ると近寄った。
「あ、う?」
少女は、喋ることができない。
「トルウラピアランス」
「――――」
「君が、始まり」
槍は、そう言った。
少女は、槍の柄に触れた。
全ては、この瞬間に狂い出した。
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