Memory1

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 最早、以前のスラム街の面影はない。地上にあるのは瓦礫や材木だけだった。  住民達は島民として立ち退き、酪農や農業をして暮らしている。島は二年前に建設された湖を渡る線路と湖を渡る船が、生活の基盤であった。  そのスラム街跡地には、浮浪者とそれを仕切る一派が住み着いている。  護送された囚人を唆しているのは、カーズ一家であった。そこまで面が割れていながら野放しの理由は、決定打となる囚人の証言が取れないことにあった。  三ヶ月前にも護送車が襲われ、証人となる囚人が自殺を遂げている。 「カーズは、ラプラスより上手かもね」   コアリスが、リスキーの高度を下げる。  少し冷たい風が、アスカの頬を刺す。 「ラプラス、か。懐かしいね。その名前」 「そうだな」  コアリスがそれだけ言った。  ラプラスは、何年も前に壊滅した。カーズはその生き残りだという節もある。 「コアリス、南東に反応あり。護送車を追う式紙確認」  アスカは、走り込んだ旋律を見逃さない。 「数、多いな。囚人に重罪犯なんて居る?」 「そんな奴を仲間に引き込んでどうする気なんだろうね」 「連絡しないと」  アスカは、種機を取り出して全体連絡を取る。
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