Memory1

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 種機は伝達器具だ。無線とは違い、文字で伝達する。種機は、大陸全体に普及している。  伝達を終えて、護送車に近寄る。  二頭立て馬車の後ろが既に開いていた。  馭者の周りを第四等隊員が囲んでいる。  アスカとコアリスが合流した時には、既に囚人は逃げ出した後であった。 「囚人のなかにカーズの部下が居た。割り出せなかったのか?」   第二等の隊長が、些か、青ざめた顔で聞いてきた。 「いえ、外部からの敵は感知しましたが、馬車内部まではわかりませんでした。申し訳ありません」  アスカは、謝罪を入れた。 「逃げた囚人を早く探さねばならない。引き続き調査を頼んだ」 「了解しました」  第二等の隊長を見送り、アスカは、嘆息する。  囚人は、カーズの部下とスラム街を目指している。アジトを掴む絶好の機会であった。  アスカは、コアリスとスラム街に戻る。  隊員数名に声を掛けて、瓦礫だらけの地面に伏せた。  スラム街の住人は、地下施設を利用している。  地下への入口は三箇所しかなく、その付近には見張りが居る。  瓦礫の合間から様子を伺うアスカにコアリスが囁いた。 「今日で詰めたい」  アスカは頷いて、悪党の位置を探る。
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