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サイトウ カケルの話
僕は孤独の人間である。中学を出て、私立の高校に通い、もう三年生にもなるが、恋人はおろか、友人と呼べる人もいない。
周りは就職活動や受験勉強で忙しくしているが、僕はどこ吹く風とのらりくらりとその日暮らしの生き方をしている。
親も放任主義で、僕の進路に興味は無いように思える。これは考え過ぎかもしれないが、自分の道は自分で切り開けと言うだけで何もしてくれようとはしない。
恐らく僕は、平凡な人生なんて送ることは出来ないだろう。一生孤独を味わい、孤独もまま死んでいき、誰の記憶に残らないまま、この存在を消していく。
六月のことだ。その日はマラソン大会という学校行事がある。三年に一度の行事らしく、学校から海辺までの二十キロをただ走るというものだ。帰宅部である僕にとってこれほど辛い行事はない。
正直サボる事も考えたが、単位というものが僕を縛る。すでにいくつか単位を落としているから、これ以上落とす訳にはいかなかった。
最初は一年生がスタートする。生徒数の事もあって、公道が混雑しないよう、十分間の間を空けて、それぞれの学年がスタートする。
三年生が走りだすのにはまだ時間がある。周りは友人達と集まり談笑をしている。たぶん一緒に走ろうなどと話しているのだろう、僕には無縁の話だ。
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