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ポタポタと体のあちこちから赤い滴が垂れる
一時の静寂は、お互いを睨み合い、様子を伺うことで終わった
「貴様が何故、俺に情けをかけるのかがわからないんだ。殺したきゃ殺せばいいだろう。その代わり貴様も道連れだがな」
聞いた後、愚問だと自分でも思った
これは情けなんかじゃなくて、目の前の死に損ないが痛みに泣き叫んで絶望のなか死んでいくのが見たいから、左腕を折った
次は右腕。獲物は武器を持てなくなる
次は左足。逃げる手段を奪う
次は右足。逃げられない絶望と、死への恐怖が獲物を包む
そうして命を乞い泣き叫ぶ獲物を、こいつは笑って切り刻んできた
自我が無くなり、悪霊となってもそういう根本的な所は最低な野郎だ
殺さないのもそれ。
俺を殺した後、こいつは俺の魂をも食い尽くすだろう
でもそんなやわな俺じゃない
何百年と生きてきた死神をナメるなよ
魂だけになっても体の底からぶっ壊してやる
「右腕だけでも戦えるよ、ちょっと前まで超元気だったじーさんがそうだったもん。じーさんが出来て俺が出来ない、ていうのは無いだろ、伊達に長く生きてないし。」
チャキ、と音を立てて鎌を構えて見せる
次の瞬間、再び無数の鋭利な影が頭の上から降り注いできた
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