1章

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 突然だが、君は春と聞いたとき何を思い浮かべるだろうか。  オーソドックスな所なら、桜や花見。入学式に卒業式。後は、野原でピクニックとか。花粉症を加えても良いだろう。嬉しくは思わんがな。  まあいずれにせよ、ほとんどの人は春を前向きに捉えるだろう。俺もそうだった。そうだったんだが……。 『今日は、一日中雨が降り続けるでしょう。お出掛けの際は、雨具等をしっかり準備して下さい。次は、週間予報で----』  窓を開けると、大粒の雨が部屋に侵入して俺の鬱な気分を加速させる。あ、上履きも濡れた。  雨。今日は入学式だってのに。なんてこった。  これじゃ春っぽいムードなんて皆無じゃねえか。風もふいてっから桜も散ってんだろうし、花見なんて持っての他。ああ、花粉が飛ばねえのは良いな。  ---そう、今日は入学式。  まあだからと言って何か特別な事があるわけでもないが、今日から俺は高校生である。  せめて今日くらいはうきうきした気分で学校に行きたかったが、窓の外から聞こえるザーザーーという音がそりゃ無理だと俺に告げている。  全く、何なんだ。
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