憂い

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「あとは実際にグラフかいてみて、Y=Kを移動させながら、ぶつかるところかを何個か調べれば、できるよ。多分。」 …たぶん? 「うん、何となくわかったかも。」 教えてもらったことを忘れないように 分かりやすいような言葉で ノートの隅っこにまとめていく。 静寂。 さらさら、とペンを動かす音だけが 響く。 でも それは心地よいもので、由樹も別に鬼にした様子はなく、長い足を床へと投げ出し 椅子に座っている。 無機質で、私にとっては何もないただ白いだけの病室。 だけど、由樹がいるから、不思議と暖かみを感じる。 「…ん?」 きょろきょろと落ち着きなく辺りを見回していた由樹の視線が 一点で止まる。 「長州の…志士たち…? なにこれ、お前歴史好きだっけ?」 一冊の本を手に取り、再び私の方へ向けられる ビー玉みたいな瞳。 「あ、まぁね。長州の偉人に興味があって。 私と大した歳も変わらない人たちが、日本を変えようと走り回ってたんだなって、ね?」
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