憂い

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「長州の偉人って…木戸孝允とか高杉晋作とか久坂玄瑞とか…伊藤博文、とか?」 ぱらぱらとページをめくりながら偉人の名前をあげていく由樹。 「そうだよ、あと、年若くして亡くなった 吉田稔麿(トシマロ) 池田屋事件で死んでしまうの。新撰組の、沖田総司に斬られるっていうのは後付けみたいだけど…」 「稔麿??はじめて聞いた。」 「あまりスポットが当てられてない人だから。」 「へぇー… なんか、ほんと意外だな。」 意外って…私が歴史に興味を持つことが? そうだったらなんか癪。 「私は、彼が特に好きなの。っていうか、生きていたら総理大臣になってたかもしれないんだって!…なのに、死んでしまって。」 自分のことではないのに、自分が生まれる遥か昔のことなのに、 何故かとてつもない虚無感におそわれる。
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