憂い

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「あ…すっかり忘れてた。」 由樹の顔から暗いものが消えて、私は内心ほっとする。 「今日は安売りしてたんだよ。 ほら。」 そう言って袋から出されたのは プラスチックのパッケージにこれでもかと言うくらい詰め込まれた… みたらし団子。 ふわっと甘い匂いが薫ってくる。 「だからって…買いすぎ。誰が食べるの?こんな量。」 「俺。」 「からだ壊すよ?」 「明日はたくさん動くから平気。」 はあ…とため息が漏れてしまう。 そうなのだ。 由樹は三度の飯より甘いもの。 といえるくらいの甘党。 毎回といっていいほどあまーいお菓子を買ってくる。 別に私も 甘いものは嫌いじゃないし、どちらかといえば 食べる方だけど… 「やっぱからだ動かしたあとは甘いものだよなぁー! ここの団子ほんっとうまいし!」 もうすでに食べ始めてるし。 「ほら、ほたるも食え。」 差し出される団子。 そんなに焦らなくても団子は逃げないよ、 そう言おうと口を開いた瞬間、 「…っもが!?」 口に団子を突っ込まれた。 抗議しようと由樹を見るが… 口許を緩ませて、 幸せそうにだんごをほおばってる… これはもう、なにをいっても無駄だよね… そういう結論にいたって、口に突っ込まれた団子を味わうことにする。
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