10人が本棚に入れています
本棚に追加
――
真夜中、
ふと目が覚めた。
腕に打たれているはずの点滴がはずされていて、
あれからかなりの時間がたっていることがわかる。
発作も落ち着いている。
それもこれも、薬の効果だけれど。
『可哀想』
その言葉が頭の中にこびりついて離れない。
「…うっ…」
『兄』という単語を聞いて、気持ちが悪い。
吐き気さえ込み上げてくる。
…少し風に当たりたいな。
そろりと、ベッドから降りる。
ナースステーションの前さえ通らなければ、看護師たちにばれることはない。
静寂に包まれた真夜中の病院の廊下
自分の足音が、嫌なほど響いて
不気味さを感じさせる。
私は極力足音を立てないよう、
忍び足で 屋上へとつづく階段へ向かう。
最初のコメントを投稿しよう!