憂い

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なんでも、フェンスが壊れかけていて危ないとかで、 立ち入り禁止になっているこの場所 屋上は私の特別な場所になっていた。 嫌な夢を見たとき、 叔母が来たとき、 虚無感に襲われてどうしようもなくなったとき …そんなときにこの場所に来るのだ。 サァッと まだ少し冷たい風が 肩で切り揃えられている黒髪を揺らしていく。 なにも羽織らずに薄着できてしまったのは失敗だったけれど… いまの服装は、首の後ろでリボン結びをして肩紐を留めている 薄めの真っ白なワンピース。 長い間病院にいると、パジャマのようなものは着たくなくなって 普段はだいたいワンピースを着ている。 「上着…持ってくるんだった…」 でも、風が気持ちいい。 さっきまで喉元辺りまで込み上げてきていた気持ち悪さは なくなっている。
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