憂い

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「あ、あらぁ?…きたの?黒木くん… 」 黒木、という単語に 私の意識は引き戻される。 「どうも、おばさん。」 「…由樹。 今日もきたの?部活は?」 ひきつった笑みを張り付けたままのおばさんは無視して話を進めていく。 「よっ、あーまぁな、今日はいいんだよ。」 黒木 由樹(クロキ ユキ)私と同じ17歳。 やわらかな栗色の髪と、ビー玉を連想させる透き通った茶色の瞳 が特徴的な、私の幼なじみ。 「ふぅん?」 「ふぅん?ておま……ほたるが聞いたんたろ?」 そんなこといいながら手をグーにして怒ったような顔を作る由樹。 もちろん本気で怒っているわけではない。 「黒木くんが来ているなら邪魔だろうから、わたしはそろそろ帰るわね?蛍ちゃん?」 着替えは棚においといたから。 そう言い残して おほほほほ、と不自然な声をたたえて 叔母は帰っていった。
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