憂い

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「…たく。相変わらずだなあの人。 嫌なこと言われなかったか?」 心配そうに顔を覗き込まれる。 「へーき。」 内心叔母がいなくなりほっとしているけれど、それはあえて口に出さない。 そこでふと、頭によぎった素朴な疑問を 投げ掛けてみることにする。 「ねえ、由樹?明日剣道の試合じゃないの?」 しかも、最後の。 今は5月。三年生になった由樹はそろそろ部活を引退するはずだ。 由樹は幼稚園の頃から剣道をやっていて、全国大会に行くほどの腕前。 …らしい。 「いいんだって。試合前日だし休めって言われたんだよ。 って…そんな顔すんなよな! 」 そんな顔って…どんな顔? 由樹が来る度、嬉しさで一杯になる一方で 私なんかが由樹の大切な時間を使わせてしまっているという 罪悪感がある。 それが顔に出てしまっていたのかな…?
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