カク

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話が進まないな。ともかく、この大量の書物。 これらは今、なんの規則性も無く不恰好に、ただ乱雑極まりない状態で保管されているわけだが。 ずばり、これらの整頓をしてもらいたい。 本を綺麗に片付けるだけだ。簡単なことだろう? 量以外を除けば。 そのために、はい、これ。エプロンと埃をとるためのはたき。 ちゃんと道具は貸し出さないとね、経営側としては頼んで働いてもらうんだから。 ああ、あと舞い上がった埃を吸い込まないようにハンカチを。 ちゃんと鼻と口、両方を隠すようにするんだよ。吸い込んだら体に悪いからね。 必要なものがあったら言ってほしいな。 もっと棚が欲しいとか、インテリアが欲しいとか。 可能な限り、手配するよ。 仕事中の規約だが、基本的には整頓さえしていてくれれば他は何をしてくれても構わない。音楽を聴いたりしてくれても全く問題ないよ。 それで作業効率が上がるのなら尚、良い。 音楽といえば、君はどんなジャンルが好きかな? 激しいロックかい? それともノリノリのヒップホップか。それともレゲエ? 個人的には落ち着いたジャズも好きだが、やっぱり古きよき日本の雅楽も捨てがたいなあ。 まあ、それは君が好きなもの選べばいいよ。 子守唄で眠られるのだけは困るけどね。 一息つきたくなったら声をかけるといい。 美味しくないが珈琲くらいならぼくが入れるから。 整頓の仕方も君の自由だ。大きさで分けるも良し、背表紙の色で分けるも良し。五十音順でも、なんだったら逆さに並べても。好きにやっくれていい。 横に並べなくたって例えば階段のように積んでくれたってそれはそれでいい。何かしらの規則性を持ってやってくれるならね。 でも勘違いしないでほしいことがある。それはこれがあくまでも整頓であること。整理じゃない。 わかるかい? 整頓はきちんと整えることだ。それと代わって整理は不要なものを処分するといった意味だ。 ここには処分が必要な書物はなに一つない。 故に整理は不要だということだ。オーケー? よし、もの覚えがよくて助かる。 前の子はなんでもかんでも捨てようとするもんだから止めるのが大変だったんだよ。 そういえば彼女の欠点はそこぐらいだったような気もするな。 他は本当に完璧だったんだが。 ああ、前の子と比べるなんて失礼だったね。気をつけるよ。 それじゃあ、早速始めてくれ。 仕事は文字通り、山積みだ。
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