P.58 千刃覇哭のセラ

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先日の戦闘では七千ほどいただろうか。 まだそう日はたっていないはずだが、今回はその倍以上集まっているようだ。 よくたった数日でこれだけ集まるものだ。 見る限り、日頃から兵士として訓練されているのはほんの一握りだろうが。 本当に数だけは多いのだな、とつくづく呆れさせられる。 数だけで私たちをどうこう出来ると考えている頭の悪さは、相変わらず何も学んでいない。 その頭の悪さが私を苛立たせるというのが、何故わからないのだろうか。 「……数なんざ関係ねえ。我に害するもの全て滅すべし、……だ」 私の言葉に答える男の目付きが鋭くなり、逆立った髪が心なしかゆらゆらと揺れる。 男の顔面の聖痕がぼんやりと赤く光っていた。 「その過剰な防衛本能は相変わらずか、アスラ」 「てめえとお喋りしに来たんじゃねえんだよ、黙ってろ」 そう吐き捨て、男は前へ歩きだした。 確かにそんな時間も惜しい。 さっさと始末してしまおう。 一人残らず殺してしまおう。 胸の聖痕が疼く。 その疼きの意味に従い、私は走り出した。 ▲▽▲ このあと、約一万五千人の兵士他幹部たちはあっという間に皆殺しにされるわけなんだけど。 まあひどいもんさ。 引きちぎられ、押し潰され、切り裂かれ、貫かれ、灰にされ。 一人も残すことなく虐殺したわけだ。 いや確かに一万五千人でよってたかって二体を殺そうとしているのだから、それは正当防衛なのかもしれない。 しかしまあ、それでもひどいもんだよ。 さて、 イデアに誕生した九体の魔人。 彼ら彼女らはその生まれながらにして自らに課せられた、『世界を終わらせる』という大いなる使命をどう考えていたと思う? 実はみんながみんな、その使命にひたむきだったというわけじゃないんだよ。 ほとんどは自分の好き勝手をしていたと言ってもいいね。 特殊な力を持ち、人では到底太刀打ち出来ない身体能力を備えてはいても、中身は人間と大差ないのであればそれも当然と言えば当然だ。 何をしていようとその人の勝手、じゃなくてその魔人の勝手。 だからそれぞれ、やりたいようにやりたいことをやっていたのさ。 魔人らしいことをしていた者もいれば、そうじゃない者も。 と、まあこんなことを言ってはいるけどなにが魔人らしいとか魔人らしくないとかなんて、重要なことではないようなことだとぼくは思うんだけどね。
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