カク

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よろし……おっと、ひとつ言い忘れてた。 一番言っておかなくちゃいけないことなのに、危ない危ない。 いいかい? これから言うことはとても大事なことだ。 よく聞いて。 この店には古今東西ありとあらゆる本が集まってる。 奇跡を起こすと言われる聖なる書物から、決して開いてはいけない禁書まで。 国一つ売ったとしても手に入らない書物が中には混じっている。 何千何万冊と積んであるこの本たち、その中に一冊として同じものはない。 なんでそんなものがこんなにあるのか、だって? んー……、よく知らないんだ。 ふと見ると増えてるんだよ。見知らない本が。 珈琲をいれている間に、ぽつん、と置いてあったり。 積んである本たちも僕が積んだわけじゃないしね。 気づいたらこんなに勝手に積まれていたわけさ。 正直なことを言えば、ぼくは自分から本を仕入れたことは一度もないんだから。 だから本当は、これは僕の商品ではないんだよ。 まあ、誰もいらないからこんなところに寄ってくるんだろうと思って勝手に売っちゃってるけど。 奇妙でしょ? でもそれがいい。 とても素晴らしい場所だ。 なにより、仕入れが楽だしね。 それで、だ。 さっき整頓さえしてくれればなにをしてもいいって言ったよね。 別に絶対にやるな、っていうわけじゃないんだけど。 ここに積んである本をむやみやたらに読むのはやめた方がいい。 なんであれ、それらすべて、どれも魅力的で実際精神が苛まれるほどに刺激的だ。 もしかすればこれらを書いたのは人間ではないのかもしれない。 いや、もしかすればじゃないか。 なんにしても、時間潰しに読むのは全くもってこの上なくお勧めしないが、まあそれも君の自由だ。 さて、それじゃあよろしくね。 ▲▽▲
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