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この日記の主人公とも言える女性の感情が。
憎しみ、という感情が大部分を支配していたよね。
しかし、なにか戸惑っているようなところもある。
でしょ?
こうやって本に込められた感情をぼくが君の頭に流し込み、目には場景を、耳には音を。
要は著者本人にでもなったように、その状況下にあたかもいるかのように感じられる。
ふふふ。
おお。察しがいいね。
そう、この日記はこの世界のものじゃない。
こことは違う、別の世界のものさ。
知りたいの?
うーん、続けていけば自然にわかるんだけど。
まあいいか。予習は何にでも大切だし、いいことだ。
……そうだな、あらゆるものに始まりがあり、終わりが来るよね。
君もいつかは死ぬし、ぼくもそう、必ず死ぬ。
形あるものは崩れ、概念は消失し、生きるものは死ぬ。
諸行無常。盛者必衰。
それが運命で、それが宿命なんだ。
それを止めることのできるものなど誰一人として存在しえず、なに一つとしてあってはならない。
たとえ神とて、いつか死ぬんだから。
終わりを止めることのできる神もまた、いない。
それはすべてを包み込む慈悲深い異世界、『イデア』にも、同じこと。
この日記の書かれた世界もまた終わってしまったのさ。
たとえ世界にも終わりを止めることはできない。
そして世界にも終わりはある。
永遠に続くものなどなに一つないのなら、それは世界にも終わりがあるということの証明に他ならないんだから。
ただ一つの相違は、イデアには終わりが来るのではなく。
『世界、イデア自信がイデアを終わらせる』のさ。
その終わりを、イデアの人々は『黙示録の時』と呼んでいた。
予言としてね。
子である人間がどうしようもなく汚れ。
それがすべてを覆ってしまったとき、イデアは終わることを決める。
どこからか現れる、イデアの涙『叫ぶ者』が悲鳴をあげるとき、『黙示録の時』は開始され、人間から産まれる体に聖痕を刻まれた『九体の魔人』によって。
神人天地すべてを破壊され、イデアは終わる。
無に帰す、有へ向かうため。
予言の内容さ。
イデアは自身を殺す、新たに生まれるために。
そう。終わりを止めることは出来ないが、もう一度、始めることは出来るから。
その世界を終わらせた魔人たちが、自分の最期の時までを記した日記さ。
ひどく悲しい、報われない物語。
さあ、後は聞くより体験したほうが早い。
体を楽にして。目を閉じて。
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