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「そこ、どいてくれない?」
「……?」
涙を拭いながら、ゆっくりと振り返る唯。その瞳に、気だるそうな表情を浮かべるクラスメートの少女の姿が映る。
「あ、香林(カリン)ちゃん」
「馴れ馴れしく呼ばないでよ」
力づくで唯をどかし、その少女――竹田 香林(タケダ カリン)は自動販売機の前に立つ。
「うぅ、ごめん」
「ふんっ。むかつくわね」
パックの飲み物を買い、その場でストローを刺すと、彼女は唯を見下しなからそれを飲み始める。
この二人、以前は仲の良い関係だったのだが、『密告遊戯』の参加資格を得るための試験に唯だけが合格した後、香林の方から一方的に縁を切られた。
「なんであんたみたいのが、あのゲームに出れるのよ」
それは単純に、純粋に、『妬み』と呼ばれる類いの感情である。
「そんなの、私だって知らないよ」
「チッ……」
わざとらしく舌打ちをすると、彼女は不機嫌そうにその場を後にした。
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