遊戯

12/14
前へ
/201ページ
次へ
  「そこ、どいてくれない?」 「……?」 涙を拭いながら、ゆっくりと振り返る唯。その瞳に、気だるそうな表情を浮かべるクラスメートの少女の姿が映る。 「あ、香林(カリン)ちゃん」 「馴れ馴れしく呼ばないでよ」 力づくで唯をどかし、その少女――竹田 香林(タケダ カリン)は自動販売機の前に立つ。 「うぅ、ごめん」 「ふんっ。むかつくわね」 パックの飲み物を買い、その場でストローを刺すと、彼女は唯を見下しなからそれを飲み始める。 この二人、以前は仲の良い関係だったのだが、『密告遊戯』の参加資格を得るための試験に唯だけが合格した後、香林の方から一方的に縁を切られた。 「なんであんたみたいのが、あのゲームに出れるのよ」 それは単純に、純粋に、『妬み』と呼ばれる類いの感情である。 「そんなの、私だって知らないよ」 「チッ……」 わざとらしく舌打ちをすると、彼女は不機嫌そうにその場を後にした。  
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加