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ピリリリリ……
ピリリリリ……
夕暮れに染まる坂道に、携帯電話の着信音が鳴り響く。
足を止め、面倒くさそうにポケットを漁る友樹。その瞳は、夕陽を受けて妖しく輝いていた。
しかし、電話の画面に表示された名前を見た瞬間、彼の目の色が変わる。
「やぁ、君から電話してくるなんて珍しいね」
電話の向こうから、若い女性の声が響いてくる。友樹はケラケラと笑いながら、彼女の言葉に答えようとする。
「ああ、そのこと? 俺は……」
そこまで言い掛けた時、彼は何かに気付いてゆっくりと振り返る。
坂の上から自分を見下ろす、少し生意気そうな女性の姿が目に入った。
顔は友樹と同い年くらいに見えるのだが、背が低めであることと、黒のベストと赤いスカートという若々しい格好のせいで、高校生くらいにも見える。
「ごめん、唯ちゃん。後でかけ直す」
相手の返答を待たずに電話を切る友樹。その瞳は、坂道を下りてくる女性に釘付けになっていた。
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