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「お前の負けだァ、過原 友樹(スギハラ ユウキ)! アハハははハはハハははは!」
狂ったような笑い声が、広い室内に谺する。
長いテーブルの上に座り、下卑た笑い声を響かせ続ける男。
そんな男を余所に、友樹と呼ばれた若い男は、テーブルを囲む椅子の一つに座り、その視線をテーブルの上に置かれた一枚のトランプに落とす。
整髪剤で無造作に整えられた髪型。整った大人しそうな顔。そして暗い色の瞳が特徴的なその男は、ふう、と一度だけ小さな溜め息を吐く。
見事に装飾されたその椅子の後ろには、高校生くらいに見える綺麗な黒髪の少女が立ち、冷めた視線を前方に向けている。
笑い声だけが際限無く反響し続ける室内。その笑い声を掻き消すように、突如として警報のような音が鳴り響く。
「おぉ! キタキタぁ! 俺の勝ちだぁ! ひゃッハハァ~ッ!」
テーブルから降り、幼い子供のように跳び跳ねる中年男性。
たった三人にしては広過ぎるその部屋の、壁の上部に取り付けられた特徴的な形のスピーカーから、低い声のアナウンスが流れる。
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