接触

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  「スギハラ ユウキ」 「……」 名を呼ばれ、足を止めて振り返る友樹。緩やかな坂と少しだけ離れた二人の距離が、二人の目線の高さをぴったりと合わせている。 「まだ何か用かい? それとも、答える気になった?」 馬鹿にしたような笑みを浮かべる友樹。しかし、女性の妖しげな微笑みに、妙な違和感を覚える。 「やだなぁ。もう答えたよ」 「は?」 「私の名前。杉原 優輝(スギハラ ユウキ)」 「……!?」 言葉を失った。 一瞬だけ真っ白になった友樹の脳内。思い出されるのは、初めて出場した『密告遊戯』……その最後の日。 名を偽り、『スギハラ トモキ』として参加し、最後にネタばらしをした時の、絶望に歪む参加者の顔が鮮明に思い出される。 「……馬鹿にしてるのか」 「失礼ね。本名よ?」 優輝はどこからかカードを取り出し、同じ名を持つ男にそれを差し出す。 はっきりと『杉原 優輝』と書かれたプラスチック製のカード。その隅には、目の前に立つ女性の顔写真がプリントされている。  
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