70人が本棚に入れています
本棚に追加
「同じ名前の出場者がいるからって、俺が混乱するとでも思ってるのかい? 運営は馬鹿の集まりだな」
馬鹿にしたような笑みを浮かべる男の言葉に、同じ名を持つ女性は不服そうな顔を見せる。
「私は別に、あなたの失墜などに興味は無いのよ? ゲームに呼ばれたからには、稼がせて貰うだけ。結果として、あなたを貶めることになる。ただ、それだけの話よ」
「ほう? じゃあ、もし『そうしなくてもいい場合』は?」
「え?」
ずいっ、と一歩近寄る友樹。身長の差から、少し低い位置にいる筈の彼が優輝を見下ろす。
急に近くなった悪戯な笑顔に、彼女は目を泳がせながら不意に後退りしたが、友樹はそれを追うようにもう一歩前に踏み出した。
「もし、俺を貶めなくても金を稼げるなら、協力してくれるかい?」
「み、『密告遊戯』はそんな甘いゲームではないわ! もし協力したとしても、裏切られるに決まっているわ!」
強い口調で言い切る彼女に、友樹はわざと悲しげな表情を浮かべる。
「ふぅん? 君は他人を裏切ってまで、勝ちたいんだ?」
「……ッ! 『私が』、という訳ではないわよ。そういうゲームだと言ってるの!」
「俺は君を裏切らない。誓おう」
「……!」
真っ直ぐに瞳を見つめる友樹に、彼女は頬を紅潮させながら坂を下りる。そして彼の横を通り過ぎた直後、彼女は足を止め、彼を睨み付けながら口を開いた。
「口では何とでも言えるわよ。何人もの人を貶めて、莫大な賞金を得てきたあなたの言葉なんて、とても信じられないわ」
吐き捨てるようにそう言うと、彼女は友樹の方を確認しないまま、その坂道を下っていった。
最初のコメントを投稿しよう!