接触

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  「同じ名前の出場者がいるからって、俺が混乱するとでも思ってるのかい? 運営は馬鹿の集まりだな」 馬鹿にしたような笑みを浮かべる男の言葉に、同じ名を持つ女性は不服そうな顔を見せる。 「私は別に、あなたの失墜などに興味は無いのよ? ゲームに呼ばれたからには、稼がせて貰うだけ。結果として、あなたを貶めることになる。ただ、それだけの話よ」 「ほう? じゃあ、もし『そうしなくてもいい場合』は?」 「え?」 ずいっ、と一歩近寄る友樹。身長の差から、少し低い位置にいる筈の彼が優輝を見下ろす。 急に近くなった悪戯な笑顔に、彼女は目を泳がせながら不意に後退りしたが、友樹はそれを追うようにもう一歩前に踏み出した。 「もし、俺を貶めなくても金を稼げるなら、協力してくれるかい?」 「み、『密告遊戯』はそんな甘いゲームではないわ! もし協力したとしても、裏切られるに決まっているわ!」 強い口調で言い切る彼女に、友樹はわざと悲しげな表情を浮かべる。 「ふぅん? 君は他人を裏切ってまで、勝ちたいんだ?」 「……ッ! 『私が』、という訳ではないわよ。そういうゲームだと言ってるの!」 「俺は君を裏切らない。誓おう」 「……!」 真っ直ぐに瞳を見つめる友樹に、彼女は頬を紅潮させながら坂を下りる。そして彼の横を通り過ぎた直後、彼女は足を止め、彼を睨み付けながら口を開いた。 「口では何とでも言えるわよ。何人もの人を貶めて、莫大な賞金を得てきたあなたの言葉なんて、とても信じられないわ」 吐き捨てるようにそう言うと、彼女は友樹の方を確認しないまま、その坂道を下っていった。  
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