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数日後……。
緩やかに流れる刻は、ここへ来てその速度を上げる。
――……ッ!
何かの気配を感じ、思わず身震いをする唯。もうすぐお昼の時間という教室内で、彼女は辺りを見回す。
教壇に立つ先生は黒板に何かを書いていて、そんな彼女には気付かない。
「唯、大丈夫? また寝惚けてたでしょ」
そう小さく声を掛ける友人に作った笑みを返し、彼女は気付かれぬように深呼吸をする。
――なんだったんだろう……。
気のせいか、と、自分を納得させる唯。しかし、それが気のせいなどではなかったことを、すぐに知ることとなった。
勢い良く開かれた教室の扉。そしてその向こうに立つ強面の男。
「あ……」
顔をしっかりと確認するまでもなく、それが『逆木』と呼ばれる男であると確信する。
そして、彼が現れた意味も……。
「お迎えだよー」
「頑張ってー!」
いつも授業中に迎えに来るその男に、皆慣れてしまったのだろう。その男の出現がさも当たり前のことのように、彼に構わずクラスメート達は唯にエールを贈る。
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