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リムジンに揺られて数時間。辿り着いたのは、運営委員だった唯ですら知らぬ真新しい城のような建物だった。
これまでの『密告遊戯』は、毎回同じ洋館で行われていた。
しかし、今回は何もかもが前回までとは違うということなのだろう。
見るからに新築といった様子の豪華な城は、白を基調とした壁のおかげで明るい雰囲気に包まれている。
「まずはスーツに着替えて頂きます。こちらへどうぞ」
逆木の案内の下、唯と香林は無言のまま、建物の内部へと歩を進める。
外の雰囲気とは対称的に内装は暗いイメージで、居るだけで気分が悪くなりそうな神秘的な香りが充満している。
長い廊下を進むに連れて、不思議と心臓が高鳴った。
――もう……戻れない。
そんな事実を、頭の中で復唱する。
廊下の先、漸く辿り着いた大きな扉の前で、唯はこの先で待ち受ける幾つもの苦難を予感していた。
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