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「……何をした?」
忠司の問いに、椅子から立ち上がった友樹が首を傾げる。
そのすらっとした長身と、きちんと正された姿勢のせいで、自然と見下すような視線を送ってしまう。
「何のことですか?」
「惚けんなァ!」
重い靴の音を響かせながら、友樹の方へと歩き出す忠司。しかしその歩みは、何処からか現れたスーツ姿の男達によって止められる。
「俺は確かにお前のパスワードを……トランプの数字を当てた筈だ!」
地面に倒され、押さえつけられながらも、負け犬は吠え続ける。
「そこの女と俺の相方が自滅した時点で、俺の一人勝ちは決まったんだァ! それが……何故だ! まさかカードを誰かと交換していたとでも言うのか!?」
哀れむような視線を送る友樹。彼はテーブルの上に置かれたトランプを拾い上げ、ゆっくりと忠司に近付くと、見せ付けるようにそのカードを彼の顔の前に突き出した。
絵柄はスペード。数字は『2』。
「これは正真正銘俺のカードさ」
そのたった一枚のカードを、忠司は睨み付ける。
「俺は確かにそのカードを見抜いて……!」
次の瞬間、忠司の顔から再び表情が消えた。
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