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その視線の先にあるもの。それはトランプだった。絵柄はスペード。数字は『2』。
「な……んで……」
そう、先程彼が言い当てたと言った、友樹のカードである。何を驚くことがあろう。
しかし、彼が目を見開きながら見つめているそのカードの持ち主は、友樹ではなく、その後方に立つ少女の方だった。
つまりは、友樹が見せびらかすように提示しているトランプカードの向こうに、同じ柄のカードが存在しているのだ。
「馬鹿な……。カードはスペードの1から13にジョーカーを含めた14枚だった筈だ! 何故スペードの2が2枚存在するんだよ!」
焦点の定まらぬ瞳を目の前の青年に向け、震える口調で問う忠司。
「……! まさか、お前! わざとそのカードを見せて……!」
友樹はにやりと不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。
「俺が何の策も無く、そんな馬鹿な真似をする訳が無いだろう」
そう言い放ちつつ、彼は自分の持つトランプをぐしゃりと握り潰した。
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