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くるりと振り返り、歩き出す友樹。その手から、握り潰されたトランプが放られる。
放物線を描き、床に落ちて一度だけ跳ねたそれは、まるで導かれるかのように、床に押さえ付けられたままの男の眼前に転がってくる。
「……ん?」
ぐにゃりと曲がった友樹のトランプカード。その後ろに、もう一枚、カード状の何かが貼り付けられている。
二枚のカードが、接着力のある何かでぴったりと貼り付けられていたようだ。
そこで彼は、二つのことに気付いて顔を引きつらせる。
一つは、彼が見破った、友樹の持っていた『スペードの2』のカード。その裏に描かれた絵柄が、自分達に配られたトランプのそれとは違うということ。
そして、そのスペードの2の後ろに貼り付けられていたカードこそが、友樹の『本当のカード』だということ。
「まさか……お前!」
「いやぁ、本当に『まさか』でしたよ」
不意に馬鹿にしたような笑みを浮かべ、首だけを動かして忠司を見る。
「まさか、こんな単純な手に引っ掛かってくれるとはね」
「いつの間に……! というかそのスペードの2はどこから……!」
そこまで言って、彼は目を見開いた。
「まさか、昨日『手品を見せる』とか言って使っていたあのトランプか!?」
「やっと気付きましたか? そう。この洋館に最初から置いてあった、レクリエーション用のトランプです」
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