悪逆

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  「なんだよ……」 猶も口許を歪ませながら、忠司は呟く。 「なに見てんだよォ……」 僅かに溢れた涎を手の甲で拭う。恐らく、視線の先に座る女性――杉原 優輝に、彼の呟きは聞こえていないことだろう。 しかし、優輝はその言葉を正しく理解したのか、ゆっくりと口を開いた。 「――、――」 「……!?」 彼女が何かを呟いた、その瞬間、再び喧しいアラームの音が鳴り響く。 「またなの!?」 「次は誰だ……!」 ざわめき出す広間の中で、忠司はやはり、優輝の姿を見つめていた。 勿論、アラームの音に掻き消されて彼女の言葉は聞き取れなかったのだが、その嘲るような表情から、見下されているかのような感覚を覚え、彼は憤怒の色を浮かべて自らの携帯端末を握り締める。 「舐めやがって……。今度はお前だ、杉原 優輝……!」 そう呟き、端末の画面を見た、その瞬間、彼は驚愕した。 画面に大きく表示された、『返り討ち』の文字に……。 その直後、彼の脱落を告げるアナウンスが、館内に響き渡った。  
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