70人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだよ……」
猶も口許を歪ませながら、忠司は呟く。
「なに見てんだよォ……」
僅かに溢れた涎を手の甲で拭う。恐らく、視線の先に座る女性――杉原 優輝に、彼の呟きは聞こえていないことだろう。
しかし、優輝はその言葉を正しく理解したのか、ゆっくりと口を開いた。
「――、――」
「……!?」
彼女が何かを呟いた、その瞬間、再び喧しいアラームの音が鳴り響く。
「またなの!?」
「次は誰だ……!」
ざわめき出す広間の中で、忠司はやはり、優輝の姿を見つめていた。
勿論、アラームの音に掻き消されて彼女の言葉は聞き取れなかったのだが、その嘲るような表情から、見下されているかのような感覚を覚え、彼は憤怒の色を浮かべて自らの携帯端末を握り締める。
「舐めやがって……。今度はお前だ、杉原 優輝……!」
そう呟き、端末の画面を見た、その瞬間、彼は驚愕した。
画面に大きく表示された、『返り討ち』の文字に……。
その直後、彼の脱落を告げるアナウンスが、館内に響き渡った。
最初のコメントを投稿しよう!