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しかし、そんな『ゲーム上での天才』とはいえ、ゲーム会場を出れば友樹もただの大学生。
その何度目かのゲームの翌日には、しっかりと大学に登校していた。
ただ、密告遊戯では唯という協力者がいるものの、大学での彼は基本的に孤独だった。
話すのは先生、そして……。
「過原!」
屈託のない笑顔を見せる、この男。同い年らしいのだが、大学ではいつもクールな友樹の方がどうしても大人に見えてしまう。
「やぁ、窓口君」
「いや、溝口だよ。溝口 清太(ミゾグチ セイタ)。いい加減覚えてくれないかな」
「……」
普通、本人に指摘されれば気付く筈なのだが、友樹は心の底から『いや、確か窓口だった筈だ』と彼の本名を否定する。
「で、何か用? またノートでも借りに来たの?」
じっと清太を見つめる友樹。口元は笑っているが、その瞳は暗く、清太の心を読むようにギラギラと輝いている。
「な……何故……!」
「君が俺に話し掛けるのは、ノートを借りに来る時だけだ」
言わば、彼らはそういう関係だった。
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