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岸朱音は何を頑張るべきか。
雰囲気はふわふわしてる割に意思が強く、まっすぐな性格。
その上クラスの誰にでも平等に接するので、男女どちらからも人気は高い。
運動神経も高く、クラスマッチでは絶対的エースとして重宝されている。
淡い栗色のショートヘア、色白でスレンダーな朱音が活躍する姿はクラス外の男子をも魅了する。
だが、朱音が弱点無しの完璧な美少女かといえばそうでもない。
「とりあえず勉強頑張れよ」
「あ、う……はい」
頭を使うのは、はっきりいって苦手なタイプだ。
二年に上がれたのは割とギリギリラインの奇跡だ、と祐希は聞いている。
「ユウちゃんはなにか頑張らないの?」
「俺は現状維持でいいだろ」
祐希は特に人気者でもなく、友達がいないわけでもない。
やるべきことは人並みにこなすが、面倒くさがる性格のため、何事も平均レベルに到達すればそれ以上の努力はしない。
身長体重共に平均的なのは、そんな彼の性格の表れなのかもしれない。
「よし、頑張るから勉強教えて」
「やだよ面倒くさい」
この流れは二年になって二人が小学校以来のクラスメートになった当初から、何度か繰り返されていた。
だからこれ以上言っても祐希が聞き入れないことを朱音は知っているはずだ。
「勉強ってさ、なんか自分のためって感じだよね」
反対側の窓から見える住宅街をぼんやりと眺めながら朱音が零す。
「人は一人じゃ生きられない。だからあたし、自分のためよりみんなのためになる生き方がしたいなぁ」
自分の言葉に酔いしれてそうな朱音に残酷な現実がつきつけられる。
「お前……留年したらみんなと離れるぞ」
「そ、それはいやー!」
全く勉強しないでいい、とは朱音も思っていないだろう。
とはいえ苦手なことを根気よく続けるのは誰だって苦痛。
なにか大きなきっかけでもない限り、人の性格はそう簡単には変わらない。
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