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「おめでとうございます。ご懐妊でございます。」
桜妃を診た医官が告げる。
「陛下。お祝い申し上げます。」
周りの宦官、女官が一斉に祝辞を述べる。
「ただし、先のご出産から体力が衰えておられます。どうかご安静に。」
医官が不安そうに告げる。
「分かった。良医官、そなたは桜妃に専念せよ。」
「しかし、、、。」
良医官は後宮最高位の医官である。
「皇后陛下のお越し。」
扉外の内宦が告げた。
「皇后陛下。」
皆が一斉に礼をする。
「陛下。御機嫌よう。」
皇后の礼を受けずに問う。
「皇后。なぜここに。」
己が挨拶を受けなければ皇后は礼を解けない。
「叔母の許しを請いにか。」
苛立たしげに問う。
「いいえ。叔母とはいえ罪人。縁を切りました。」
皇后は一瞬ひるんだが、そのまま返答する。
「桜妃が倒れたと聞きましたので、見舞いに。」
「そうか、ご苦労なことだ。」
「、、、陛下。」
見かねた徐太宦に窘められる。
元は亡き父上に仕えた者。
無視はできない。
「皆立て。皇后、そなたもだ。」
内宦の勧めに従い挨拶を受ける。
「恐れ入ります。」
「それで桜妃様は。」
皇后付きの、秋侍女が良医官に問う。
「桜妃様、ご懐妊でございます。」
「懐妊、、、。陛下、おめでとうございます。」
皇后は瞬時に祝辞を述べた。
「陛下、どうか良医官を桜妃専任に。」
続けて皇后自ら申し出た。
「皇后様の煎じ薬は如何なさいます。」
すかさず秋侍女が述べる。
「あの薬は他の医官でも煎じられよう。」
「しかし、、、。」
「良医官。お願いしましたよ。」
「は。」
「礼を言う。皇后、下がって休め。今宵はここで付き添う。」
「、、、失礼致します。」
皇后は礼をし退出した。
「皆も下がれ。」
「は。」
「桜妃。」
そっと手を握る。
桜妃、、、。倒れた時、彰を呼んだ。
やはり忘れられないのか。
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