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翌朝、現れない母を探して母の室に入った蕎の悲鳴が響いた。 「母上。」 嘘だ。こんな… 蕎が目にしたのは苦しげな表情で冷たくなって床に横たわっている母の姿であった。 美しく優しかった面影を失くしていても、それは紛れもなく母だった。 「どうして…母上ー!!」 春候子であった父を亡くしてから2年。また、可愛がってくれた祖父帝も病で没した。そして今、たった9歳で母までも失ってしまった。 何故、どうして蕎を置いて逝かれたのですか… ~蕎候子~ あなたを1人おいて逝く母を許して下さい。 私としてもどんなに心残りな事か… しかし、貴方は後継ぎ争いの火種となりかねない存在です。 貴方が生き残る為には、次の帝位につくしかない。 陛下亡き今、身分なき母の存在は、貴方の弱みになります。 これからは、一番利用する価値のある者を見極め、生きていくのです。 いつか、信じるに値する者が現れる日までは、心を殺し、誰も信じてはなりません。 貴方なら必ず争いに勝ち残ると信じています。 本当はもっと優しい言葉を、楽しい事を貴方に教えてあげたかった。 私の喬。 どうか生きて。
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