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いっちゃんはタブン気を遣ってくれたんだと思う。
あたしが男の子からの告白が好きじゃないから。
「…ごめんなさい」
昼休み。
体育館倉庫付近。
呼び出された指定の位置で待っていた平野くんに頭を下げる。
あたしとしては、彼の存在も知らなかったのだけれど。
「……え、俺結構モテるんだけど。
俺もダメ?」
心底意外そうに平野くんが聞いてきて、それに気まずい中小さく頷いた。
それを見た平野君が不機嫌そうに顔を顰める。
「……随分とお高くとまってるんだね」
「……すみません」
「ハ、謝るんなら付き合ってよ」
「………」
なんだ、この人。
タチ悪い、絶対。
心の中で舌打ちしたいような気分に駆られながら黙って俯く。
「あーあー。
友達になんて言おう。
すげぇ恥さらしだよな-」
ぐ、と顎を持ち上げられて、顔をムリヤリ上げさせられた。
「や、めて…っ」
「は?
ホント、さ。
可愛いから調子こいてんの?」
「な、なんで…っ」
なんで、そうなるの…っ!
ブンブン、と首を振ってなんとか彼の手から逃れる。
すると、逃がさないとばかりにガッと制服のリボンを勢いよく捕まれた。
擦れた痛みが首筋に走る。
―――殴られる。
危機感を感じて、反射的に目を瞑った瞬間だった。
「………安眠妨害」
体育館倉庫の中。
少し甘めの声が響いたのは。
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